「大丈夫、大丈夫」それが彼の口癖でした。
医者であるその男の人は、想っている人を日本に残して、ケニアの病院に行くことを決めます。
彼は、頼まれたら断れない性格の優しい男でした。
当時ケニアには、10歳ほどの子供も恐怖心をなくすために薬を打たれたあと、
戦争に向かわされているという現状があり。その病院にも毎日、そんな子供が送られてきます。
男は、そんな子供たちに優しく接し、子供たちも時間とともに男に心を開いていくのですが、
一人だけ心を開かない男の子がいます。彼だけは長く戦地にいたため
戦争のトラウマを吹っ切ることができないでいたのです。
患者の前では、笑顔で振るまう男ですが、その一方で心を開かない彼や、
毎日何人もの戦争で負傷した子供が病院で死んでいく現状が心の負担となり
毎日、ケニアの夜の大地に自分を鼓舞するように思いのたけを大声で叫んでいました。
そんな、ケニアの病院にもクリスマスがやってきました。
男はサンタの格好をし、子供たち一人一人にプレゼントを渡していきます。
心を開かない少年にもです。
しかし、男が心を開かない彼に渡したのはなんと、おもちゃの拳銃でした。
彼は、慌てて焚き火に拳銃を投げ捨て、あふれだす思いを初めて男に伝えます。
「僕は、戦争で9人殺した。僕は人殺しだ、自分に未来はない」
男は彼に9人殺したなら、一生をかけて10人の人を助けろ、未来はそのためにあると伝えます。
「過去」が忘れられなかった彼は、男の言葉で医者になりたいという「未来」を思い描くようになります。
数十年後の、2011年3月、東日本大震災による被災地で、誰よりも早く救護活動を行う黒人がいました。
それは、医者として日本に来た彼だったのです。
彼は被災地に一人うずくまる少年を見つけて抱きしめ、言いました。
「大丈夫、大丈夫」
投稿者プロフィール
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環境・建築学部建築デザイン学科1年
主な仕事:イベント企画・運営
趣味:ギター、ラジオ
できること:空手
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